第1章設計思想 — なぜObsidianが「AIの記憶置き場」に向くのか
3つの理由
- すべてがローカルのマークダウンファイルである。Claude Codeはフォルダの中のテキストを読むのが本業なので、Obsidianのvault(保管庫)はそのままAIの読める知識ベースになります。専用のデータベースもAPIも要りません
- リンクとフォルダで構造を作れる。人間には見やすいグラフとリンク、AIには読みやすいフォルダ階層とINDEXファイル。両方を1つのVaultで両立できます
- 人間とAIが同じ場所を編集できる。あなたがObsidianで書いたメモをClaude Codeが読み、Claude Codeが書いた作業ログをあなたがObsidianで読む。この往復が「記憶が育つ」状態です
発想の転換:読者はAI
普通のノート術は「未来の自分が読む」前提で書きます。この教科書では「AIが読む」前提で書きます。すると基準がすべて明確になります。
- きれいな文章より、箇条書きと見出し
- 感想より、事実と決定事項
- 1つの巨大ノートより、1テーマ1ファイル
- 「どこかに書いた」より、「どこに書くか決まっている」
つまずきポイント
- プラグイン沼にはまる → AIの記憶置き場に必要なのは素のマークダウンだけ。プラグインは後回しでいい
- 過去メモを全部移行しようとする → 移行は不要。今日から発生する情報だけ新Vaultに入れれば、2週間で主戦場が移ります
第2章Vault設計 — 最初に決める3つのこと
やること
新しいVaultを作る前に、次の3つだけ決めます。
1. Vaultの単位 = 「1つの活動」
会社・事業・個人プロジェクトなど、AI社員に任せたい活動の単位で1 Vaultにします。仕事用と完全プライベートは分けるのが安全です(AIに読ませたくない情報を構造で隔離できるため)。
2. 置き場所 = Claude Codeが読めるフォルダ
VaultはただのフォルダなのでClaude Codeで直接開けます。ローカルの分かりやすいパスに置いてください。クラウド同期フォルダに置く場合は、同期の競合がまれに起きることだけ頭に入れておきます。
3. 命名規則 = 数字プレフィックス+半角英数
フォルダ名は 01-inbox のように番号をつけると、人間にもAIにも優先順位と並び順が伝わります。日付は YYYY-MM-DD に統一。「あとで検索できる名前」ではなく「開かなくても中身が分かる名前」を付けます。
つまずきポイント
- 完璧な分類を最初に作ろうとする → 分類は運用しながら育てるもの。まず第3章の標準構成をそのまま作って始めてください
- Vaultを細かく分けすぎる → Vaultをまたぐリンクは張れません。迷ったら1つの仕事用Vaultに寄せる
第3章フォルダ階層 — コピペで作れる標準構成
やること
Vault直下に、この構成を作ります(そのまま使ってOK。実際にAI社員運用で使っている型です)。
MEMORY.md ← AIが最初に読む「記憶の玄関」(第4章) 00-rules/ ← 変わらないルール・マニュアル 01-inbox/ ← 迷ったら全部ここ。週1で整理 02-knowledge/ ← 会社・事業・顧客などの確定情報 03-projects/ ← 進行中の案件。1案件1フォルダ 04-output/ ← AIが作った成果物の置き場 memory/ ← 日次の作業ログ(YYYY-MM-DD.md) daily-notes/ ← 自分の日次メモ
各フォルダの振り分けルール
| フォルダ | 入れるもの | 入れないもの |
|---|---|---|
| 00-rules | 確定したルール・手順書 | 検討中のアイデア |
| 01-inbox | 分類に迷うメモ全部 | (何でも入れてよい) |
| 02-knowledge | 事実・確定情報(顧客情報、事業概要、決定事項) | 作業中の下書き |
| 03-projects | 進行中案件の資料・経緯 | 終わった案件(アーカイブへ) |
| 04-output | AIの成果物(記事・資料・コード) | 手書きメモ |
| memory | AIの作業ログ | 人間の日記 |
ノート粒度の4原則
- 1ノート1テーマ。「顧客A」と「顧客B」を同じファイルに書かない
- 見出しで前提を分ける。AIは見出し単位で文脈を拾います
- 確定したものだけ昇格。inboxのメモが「もう変わらない」と確信できたら 00-rules / 02-knowledge へ移す
- リンクは補助、フォルダが本体。AIにとっての一次構造はフォルダパスです。
[[リンク]]は人間の回遊用と割り切る
つまずきポイント
- inboxが太り続ける → 正常です。週1の整理(第6章)で捌く前提の設計なので、日々は投げ込むだけでいい
- どこに置くか毎回迷う → 迷った時点でinbox行き。「迷ったらinbox」というルール自体が最大の時短です
第4章MEMORY.md — AIが最初に読む「記憶の玄関」を作る
なぜ必要か
フォルダを整えても、AIが「どこに何があるか」を毎回探索するのは無駄です。そこでVault直下に MEMORY.md を置き、このVaultの地図と重要事項の要約を1枚にまとめます。AI社員はまずこれを読んでから仕事を始める。人間の会社でいう「新人に最初に渡す1枚」です。
やること(テンプレ)
# MEMORY.md — このVaultの地図と長期記憶 ## このVaultは何か - (例)株式会社◯◯の業務ナレッジ。AI社員はまずこのファイルを読むこと ## フォルダ地図 - 00-rules/ : 確定ルール。作業前に関連ルールを確認する - 02-knowledge/ : 会社・顧客の確定情報。事実はここを一次ソースにする - 03-projects/ : 進行中案件。作業対象はここ - 04-output/ : 成果物の保存先 - memory/ : 作業ログ。開始時に直近分を読む ## 長期記憶(重要事項の要約・1項目1行) - (例)主力商品は◯◯。価格は据え置き方針(2026-06決定) - (例)成果物のトーンは「です・ます」、1文60字以内 - (例)顧客向け送信は必ず人間の承認を取る ## 更新ルール - 新しい恒久ルール・重要決定が出たら、ここに1行追加する - 詳細は個別ファイルに書き、ここには要約とパスだけ置く
運用のコツ
- 1項目1行、詳細は別ファイル。MEMORY.mdが肥大化すると読むコストで死にます。「見出しとリンク集+要約」に徹する
- 週1回、AI自身に更新させる。「memory/の直近1週間を読んで、恒久化すべき決定をMEMORY.mdに1行ずつ追記して」と依頼するのが定番です
つまずきポイント
- 書いたのにAIが読まない → 読む導線を明示していないのが原因。次章のCLAUDE.mdに「まずMEMORY.mdを読む」と書けば解決します
第5章Claude Codeとの接続 — Vaultを読ませ、書かせる
やること
- ターミナルでVaultフォルダに移動し、
claudeでClaude Codeを起動する(VaultはただのフォルダなのでこれだけでOK) - Vault直下に
CLAUDE.mdを作り、次を書く
# CLAUDE.md — このVaultでの働き方 ## セッション開始時に必ずやること 1. MEMORY.md を読む(Vaultの地図と長期記憶) 2. memory/ の直近の作業ログを読む ## 書き込みルール - 成果物は 04-output/ に保存する - 作業ログは終了前に memory/YYYY-MM-DD.md へ書く (やったこと / 決めたこと / 次にやること / 未解決) - 00-rules/ と 02-knowledge/ の既存ファイルは、私の許可なく書き換えない ## 禁止 - ファイルの削除・大規模な移動を無断でしない - 事実が確認できないことを 02-knowledge/ に書かない
- 動作確認として、こう依頼してみてください
MEMORY.mdとフォルダ構成を読んで、 このVaultをどう理解したか3行で要約してください。
まともな要約が返ってきたら、接続は完成です。あなたのVaultはAIの記憶置き場として動き始めています。
読み書きの役割分担
- 人間が書く: daily-notes、inboxへの投げ込み、ルールの承認
- AIが書く: memory/の作業ログ、04-output/の成果物、(承認を得て)knowledgeへの昇格
- 両方が読む: すべて
つまずきポイント
- Obsidianアプリで開きながらClaude Codeに書かせると表示が古い → Obsidianは自動で再読み込みしますが、タブを開き直すと確実です
- AIが勝手にノートを整理し始める → CLAUDE.mdの禁止事項に「無断の移動・削除禁止」を明記。整理は必ず「提案→承認→実行」の順にさせる
第6章運用 — 日次メモと週次整理で記憶を腐らせない
日次(5分)
自分用の日次メモはこのテンプレで十分です。
# YYYY-MM-DD ## 今日作ったもの・決めたこと - ## 次回も使うルールになりそうなこと - ## Claude Codeに読ませたい前提・渡すメモ -
AI側の作業ログは第5章のCLAUDE.mdルールで自動的に memory/ へ溜まっていきます。
週次(15分)— 記憶のメンテナンス
週1回、Claude Codeにこう依頼します。
今週の運用整理をお願いします。 1. 01-inbox/ の中身を確認して、02-knowledge / 03-projects / 削除候補に振り分ける案を出してください(実行は私の承認後) 2. memory/ の直近1週間を読んで、恒久化すべき決定があれば MEMORY.md への追記案を出してください 3. 終わったプロジェクトがあればアーカイブ案を出してください
ポイントはAIに「案を出させて」人間が承認すること。整理の実務はAIに任せ、判断だけ人間が握る。これで週15分でVaultが腐らなくなります。
育っているかの判定基準
2〜4週間運用して、次の状態になっていれば成功です。
- Claude Codeへの依頼文から「前提説明」がほぼ消えた
- 「昨日の続きから」「いつものルールで」が通じる
- 探しものをする時間が目に見えて減った
- MEMORY.mdを読めば、第三者(未来の自分・新しいAI)でも全体像が掴める
その先にあるもの
ここまでで、あなたのObsidianは「1人のAI社員の記憶置き場」になりました。次の段階は、この記憶を複数のAI社員で共有すること。役割別のAI社員が同じknowledgeを読み、同じmemoryに書く——そこまで行くと、Vaultは個人のノートではなく「会社の脳」になります。
まずは今日、Vaultを1つ作り、MEMORY.mdを1枚書くところから始めてください。それが、あなたの第二の脳の起動日です。
